リコード法を実践中☆ななくん blog

若年性アルツハイマー病の診断を受けた母にこれからも母らしく生きて貰いたくリコード法に取組んでいます。母は大阪、私は東京の遠距離介護。普段は理学療法士として訪問リハビリや自主サークルで運動指導等をやっています。

認知症の心の中。そして寄り添う人。

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先週の訪問リハビリ。

変形性膝関節症と軽度認知症状のために、約2年半前から担当させて頂いている方からの手紙。

昨年11月末。

腰の圧迫骨折で、安静期間を経たことも重なり、認知症状が一気に進みました。

12時前に伺っても、チャイムへの応答がなくなり、真っ暗な部屋のベッドで横になり、声をかけて目覚める日々。

得意の料理や洗濯もできなくなり、お茶の入れ方も分からない。

綺麗好きなのに、整髪にも気が回らず、部屋が片付けられず、台所も食べ残しのゴミが散乱、洗濯機の使い方が分からなかったのか手洗い途中の衣類が洗面台に水浸しになっていたり、トイレが汚れていたり。

お願いした用事を済ませるとすぐにベッドに向かってしまう。

 

主介護者である息子様は、週に2回ご自宅に来て、通院に付き添ったり、食品などの補充、ゴミ出し、薬の管理表など、とても熱心にお母様の独居生活を見守ってきた方。

ただ、理想の母親像がある中での、老い、痛み、認知症への理解、はなかなか難しい部分があり、お2人が顔を合わせると口喧嘩が絶えず、お互いがストレスになっているような状態でした。

 

息子様が用意する食料は、冷凍食品やレンジでチンする品ばかり。悪気がある訳ではなく、息子様なりに、1人でも簡単に食べられる物を考えて購入されていたのだと思います。

だけど、今のお母様は、誰かがお膳に食べられる形で準備をしなければ召し上がることができない状態です。

レンジの中に食品が入ったままになっている状況が繰り返され、温めボタンは押せるけど、ボタンを押したことを忘れてしまうのが認知症という事などをお話し、当面、訪問スタッフが可能な限り、夕飯の準備もする事を提案しました。

息子様も理解して下さり、その後、お弁当を買うことは無くなり、小分けの真空お惣菜、野菜、卵、非常時用に真空ご飯や缶詰め、ふりかけなどを購入してくれるようになりました。

 

夜の服薬もできない状況なので、リハビリやヘルパー介入時に服薬する方向となり、そのためには何か食べて頂かなくてはなりません。

患部以外のストレッチなどを行ったら、簡単なブランチを作り、召し上がって頂く間に、夕飯の準備を行い、服薬、手紙を残してギリギリ1時間、という流れを繰り返しました。

まずは栄養優先です。

 

私は週に1時間という短い時間しか関わることはできません。

それでも、着替え、カーテンを開ける・お茶の準備や米研ぎ・書字、そしてストレッチや運動も少しずつ増やし、小さな日常を少しずつ取り入れることで、たった1時間の中でも、笑顔や発言が増え、表情が豊かになっている事を感じました。

患部の痛みが軽減してきたのは大きな要因だと思います。

概日リズムを取り戻したい。

朝ベッドから起き、夜に眠る、という一見当たり前の習慣を取り戻すためには環境作りが大切と考え、

・私の訪問時間をひと枠でも前にずらす

・デイサービスの導入

をケアマネを通じて息子様に提案しました。

 

目の前に飛び込んできた光景は、今でも忘れられません。

この日は深夜から雨で、とても寒い日でした。

どれ程、心細かったことか。

あの転倒から約2ヶ月。

まだまだ以前ほどには回復してしません。

ただ、腰の痛みは無くなり、幻視や暴言が落ち着いているのは確かです。

何より、3月からは、毎週、朝伺うと、部屋の電気が付いていて、笑顔で出迎えてくれるようになっています!

 

お茶は、私にも茶請け付きでもてなそうとして下さったり、

炊飯は、炊飯器のスイッチ操作はできないけど、水分量は一発オッケー、

お浸しは、茎の部分を30秒ほど先に茹でてから葉を入れるという時間差、

ごま和えは、臼でゴマを引くという一手間を加え「本当は少し煎ると香ばしくて美味しいのよ」と教えて下さる。

ベテラン主婦の知恵を備えた感覚が、少しずつ取り戻せてきているように感じます。

 

ケアプランの目標で、このような表現は珍しいと思います。

だけど、今のこの方にとっては、1番大切な事。

ケアマネを中心に、関わるスタッフ全員が意識統一できているように感じます。

 

少しずつではありますが、状況が上向きになっている事を感じていた先週。

お部屋に入ると、テーブルにこのお手紙が置いてありました。

 

認知症の方の真の気持ちは分からない。

だけど、認知症の方の誰しもが、こういう感情を通るのではないかと想像します。

どれ程の恐怖と闘わなければいけないのか。。

 

「助けてくださいませんか?」

手紙に書かれた心の声。

自分の無力さを感じずにはいられませんが、私にできること、そして、楽しいと感じて頂ける時間を作っていけるよう、これからも寄り添える努力をしていきたいと思います。

と言うか、それしかできない。。

 

この日、ドア外でカッパを着ながら、鍵をかける音を確認するために耳を澄ませていたら突然ドアが開きました。

「傘あるの?寒いから気をつけてね」

気遣いの言葉。

そして、以前のように、私が去るまで笑顔で手を振って見送って下さいました。

戻ってドアの確認をしたら、ちゃんと鍵も掛けられていた♡

 

母はと言えば、、、

アルツハイマー病と診断された自覚はあるものの、多分、診断に納得はしていません。

脳の病気の難しいところでもあると思います。

周囲に迷惑をかけること、お金のこと、孤独感、死、、、

時々そんな話が母の口から飛び出します。

冗談まじりに明るく話しますが、普段、1人でどんなことを考えているのだろう。。

 

病気を意識させ、自覚させることがはたして良いことなのか、、、正直分かりません。

だけど、改善方法が生活習慣がベースとなる以上、今の私には他の選択肢が見つかりません。

 

孤独や恐怖から、何とか解放させてあげられないものかと思いますが、それはもう少し日々を積み重ねた先に、考えていくことかなと今は思っています。

そして昨日はリコード部オフ会。

患者の本当の気持ちは分からないけど、そこに寄り添う家族の存在は大きく、家族は家族で悩み苦しんでいる。

そんな人同士が言葉を交わす機会、そして、リコード法を実践する上での悩みや情報を共有できる場というのは、ちょっとだけ前向きになれたり、平常心を取り戻せたり、今何ができるのか、何から手をつければいいのかを考えるきっかけになったりと、、、かけがえのない時間だと思います。

目を背けることやリコード法の割合を減らすことも一つの選択肢だと思います。そういう事も含めての悩みや葛藤を共有する時間。

私も今できる事に向き合いたいと改めて感じました。

アルハカさん、色々と事前準備をして下さり、ありがとうございました。

皆さんにお逢いできて良かったです。

ありがとうございました♡